Interviews

vol.02 :i8u - about "Surface tension"

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‘Surface Tension’ は繊細な音色が広々としたサウンド空間に美しく溶け込んだ、本当に素晴らしい作品だと感じました。この作品に対して、もし何かテーマやイメージがあったら教えてください。

普通はテーマ等はありません。何か決まったアイディアというより、作曲は気持ちの問題です。 私の生活はある意味でカオスですよ。アーティスト、母親、作曲家、それぞれの役目が必要とする色々なことがいつも重なり合っています。だから音楽を作る時には、頭が自然に非常にピースフルな、不要な考えや邪魔のないところに惹かれていくのです。私は音楽で、その平和な状態の本質をうまく表現したいと考えています。頭の中に聞こえる音を出来るだけ正確に作品の方に引き出すのが核心です。


作品にフィールドレコーディングを使う事になったきっかけや理由を教えてください。

私の作曲過程は色々なフィールドレコーディングを集めて、元々の音源を認識できないところまで処理をかけることです。私達は普段様々な音に囲まれていますが、人間はその殆どを無視するようにできているのです。そういった日常的な音を変形させたり、リサイクルしたり、新しい目線から聞こえるように再表現します。構造上の無音に関する共感のそばに、音を追求し続ける推進力があります。
フィールドレコーディングはメロディ性質が隠れている、とても豊かな音源です。その隠れた性質を発見するのが好きです。インスタレーションの作品でも、日常的な空間に対する人の興味をひきたいので、同じ工程をたどります。私は特に我たちがほぼ認識しなくなった(見る事のできない)構造や空間や事象にとても刺激されます。


この作品の作成環境について教えてください。

ここ最近、ピアノやギターのような楽器をますます作品で利用したくなっています。これらの楽器は私の以前の音楽トレーニングの基本でした。しかし今は、これもフィールドレコーディングとして考えるようになったのです。いわば、ただの音源です。文法として使うわずかなピアノ以外、フィールドレコーディングと同じように録音して処理をかけて使います。
surface tension では、アコースティックギターを使うことにして、弾いたり即興したり、まあ、それで音を出しているのを録音しました。その録音を聞いて、ある長い部分を残しながら気に入ったところを細かく切り取るというような編集を長くやっていました。次は色々な方法 やプラグイン等で、目指している音が出るまで処理しました。この処理の部分はいつもとても本能的です。そうしてこの作曲で使いたかった他の音源も加えて、巨大なサウンドバンクができました。

作曲の過程はとても本能的ですが、限定的な面もあります。大体気に入った音から始まり、何がうまくいくか何がうまくいかないかをはっきり知りながら、その時の考えを反映するように 各作品を作っていくのです。音楽を息づかせる事と静寂、という2つのテーマをいつも大事にしています。


ギターを引いていると聞いて少し驚きましたが、好きな楽器はありますか?

ピアノとチェロが一番すきです。元々の音楽トレーニングはクラシックピアノでした。とはいえ、約20年間もピアノを弾いていなくて、普段は特に弾きたい気分はないです。しかし、フィールドレコーディングとして楽器を使いたい気分が強くて、surface tension でギターを使うのは私にとってはとても自然に感じました。


フィールドレコーディング、作曲のためにどんな機械やソフトを使っていますか?

録音は ZOOM H2 を使っています。あと MS404 Doepfer とニューヨークで展示をした時に使用したビンテージのアナログレコーダー、処理はAbleton Live です。


話は逸れますが、昨年の東日本大震災とその影響についてはどう考えていらっしゃいますか?

津波にはものすごくショックを受けて、第一の心配は日本にいる友達とその家族のことでした。 お陰様で皆は無事で安心しましたが。そういう災害は実際にどんな規模なのかは最初は把握しづらいものです。そんな中、ニュース等で本当に英雄的な行為をしている人たちも見ました。 これからどんな影響が私たちに与えられるかは予想しにくいですが、何か学んで、エネルギー源の安全性について議論を始められないかと思います。


震災後、色々な国で原子力に対する方針を真剣に見直し始めていると感じますが、カナダの電源構成はどんな感じですか?

専門家というわけではないですが、59%程は水力で、他は通常の熱エネルギー(27%)、 原子力(12%)と自然エネルギー(2%)です。


あなたは自然災害が音楽に何かの影響を与えると思いますか?

大震災のような出来事に纏わる感情は無意識で、いつ、どういう風に外に出るか自分では分かりません。 ある時、ある気持ちにはなっているかもしれませんが、その事由は分かりません。作曲の時は本当に音、音の関係、音のダイナミクスしか考えていません。
私の作品はよく気持ちから始まります。作品にはある感情が現れていることが多いですが、確かではないし、どんな形で現れてくるのかは予め分かりません。また、それを探す行為自体が感情を歪めてしまいます。エクスペリメンタルミュージックは自由だと思われるかもしれませんが、作曲する時はよく気持ちや作曲方法に縛られている気がします。


最近の注目アーティストは?

最近は、Donnacha Costello と Evala を聞いていますが、Miles Davis (kind of blue), Tom Waits (closing time)と Charlie Parker にいつも戻ってきす。まあ、静寂、停止、音楽の推移をちゃんと理解しているアーティストが好きです。


これからの予定や将来の期待について教えてください。

これから US の LINE から1つのリリースを控えています。それから、大きな空間で行われる、コンサ ート、アートインスタレーション、ダンスのパフォーマンス、ビジュアルなどのイベントの準備をしています。ラジオでは framework という Patrick McGinley の番組で DJ として出て、 2012年上旬は resonance fm で新しいショーをやります。3 月にはあるオーディオビジュアルイ ベントをキュレーションします。あと、私は’immersound’というイベントの創立者で、それはミニマルな音楽演技の理想的な場面となる、観客の居心地をフォーカスにしたものです。今は、 2012年6月3日にある immersound3を準備しています。
将来的には映画のサウンドトラックを制作したいし、もっとダンサーとのコラボをして、i8u のサウンドを洗練し続けたいです。

2012年01月(横塚壮)

vol.01 :YUKI AIDA - about "Revolve"

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今回の作品を聴かせて頂きまして、今までリリースされてきた作品よりもシリアスな印象を受けたのですが、いかがでしょうか。

シリアスですか、あるいはそうかもしれません。
というのも、これらの曲は全て311の地震後に作られたものだからです。
特にこれと言った事柄や理由はありませんが、あれからとても大きな視点、マクロで長期的なスパンで物を考える事が多くなったような気がしています。
タイトルのrevolveも、回転、惑星の公転をイメージしてつけました。
この言葉には考えなどが心の中をぐるぐる回るという意味もあるそうです。
思えばレコードも中央のホールを中心にぐるぐる回っています。今の私にぴったりな言葉だと言う事ができるでしょう。


今回の作品のキーワードは「回転」のようですが、今回の素材としてレコードのノイズを使用した事もテーマからなのでしょうか?

あ、順序が逆ですね。
私はコンセプト先行でものが作れない為、単純にレコードを使用したからrevolveと名付けた、みたいな事です。
私はテーマはいつも後付けです。
手当たり次第作って、後から振り返った時に、その時の自分のカラーが見えてくるので、それを言葉にしているってだけですね。


なるほど、3.11以後なにか変化したと感じる事は他にありますか?(自分のことでも、他のアーティストや世の中のことでも)

音楽に関しては、あまりないように思いますね。
他の方はどうなのか分かりませんが。
結局音楽を作る時はただ作るだけなんです。
周囲の事に多少影響はされてるんでしょうけど、例えば、何か起きたから次はこういうのを作ろう、みたいな事は全く思わないです。
基本「習うより慣れろ」型の人間なので。
先ほども話しましたが、コンセプトありきで制作するってのがどうしても出来ないんです。
延々と音と遊ぶ中で、あ、これはこの音をこういう風に使ってこのくらいの曲ができるな、みたいな着想の仕方なので。

あと、例えばパン屋さんがそれまでいつも卸してもらってた小麦を作るのに、土地に深刻なダメージを与える農薬を沢山使ってた、と後から知らされたら、罪悪感あるでしょう?
それと同じ罪悪感が、電気を使って音楽を作っている私にもあります。
ですから、一刻も早く、自然エネルギーへの移行を私は願ってます。これから100年先、人類が暮らす為にはそれは最低限の条件だと考えています。


現在では程度の差はあれ音楽制作にかなりの人が電気を使っていると思います。特に相田さんの制作されているような電子音楽は電気なくしては成り立たないと思うのですが、ご自分のやっている活動や音楽についてはどのような立場だとお考えですか?

立場。。立ち位置ですか?
多分音を出し続けるしかできないんですよ。結局は。
理想はアメリカのように電力会社が何社か出来てですね、日本の電気も家庭毎に選べるようになったりすれば、一番良いとは思いますけれど。
そうすれば、多少高くても自然エネルギーを使えるという選択肢が増えるわけですから。
でも最近言われているように安くて大量生産できる原子力もですね、何かあった時のコストまで料金に含めたら、結局自然エネルギーよりも高くなるそうで、そしたら原子力を使う理由なんて何もないですよね。

うーん、でも電気がたとえなくなっても、私は木を叩いたり擦ったりして音を出していると思います。


それでは、今回の制作環境について教えてください。

今回はターンテーブルをメインにレコードが走行する時のノイズを、アタックを潰したり、元のノイズに含まれている微細な音程感を増幅させてベーシックな持続音を取り出しました。
そこへギターや電子音など、4つか5つくらいのレイヤーを薄く重ねています。
とてもデリケートで控えめなコンポジションです。
ドローンは大概そうですが、仮に、1つのレイヤーを今より2db上げても、今の音響バランスは崩れてしまうでしょう。
そういった意味では、今回の作品をライブでまた違ったアプローチで演奏するのは今からとても楽しみです。
会場によってもリスナーの立ち位置によっても響き方はまるで違ったものになるでしょうし。
ですから、マスタリングの段階でもほとんど何もしていません。ほんとに若干曲同士の音量を揃えたくらいです。

前作のsongbook(mmr-07)は、cloudchairさんにほぼ全曲で弾いて頂いてTaylorにも手伝ってもらった事もあり、ポップである意味力強い作品です。
フィールドレコーディングを除いては全てギター1本で多重録音して、そこから各レイヤーをプロセシングしながらバランスをとっていきました。
オーディオもかなりスライスしているので、今回の様に薄い膜を何層にも重ねていく、というよりはコラージュのような感覚に近いと感じています。


相田さんはAbleton liveのヘビーユーザーだったと記憶しているのですが、今回もliveを中心に編集されたのでしょうか?

そうですね、それほどヘビーユーザーってわけでもないんですが..flag.frogみたいにカッチリしたものはlogicで作り込んで、abletonに落とし込んでますね。
今回はドローンになるだろうな、と割と初めから思っていたので最初からabletonで制作しました。
編集という編集はほとんどしてない...ですね。
ノイズもギターも一発録りだし、オートメーションを書いたのはほんとf.i&f.oくらいです。
なにせほら、3日で完成したんで、安産でしたね^^


普段の平均的な製作期間はどのくらいでしょうか?

うーん、作品によってホントにまちまちですが、昔に比べたら随分早くなったと思います。
毎回毎回それまでにやってなかった事がやりたくなるので、時間がかかる方だとは思うんですけど、songbookの時は3~4ヶ月かかった気がしますし、
flag.frogは手のあいた時にちまちまとやっていたのでリミックスも入れたら、1年くらいかかりましたね。
ですから、それに比べたら今回は驚異的な早さ!
まぁ、早ければ良いってものでもないですが、今ではドローンやクラブでやるようなリズムトラックは数時間で完成まで持って行けます!!えっへん!(笑)


活動開始から一貫してドローンの作品をつくり続けていらっしゃるという印象があるのですが、ドローンという作品形態やシーンについてはどうお考えですか?

いや、flag.frogとかLiquid Weeldとか別名義では割とドローン以外もやってるんですよ。
飽き症なのと一貫性が全く保てない性格なので、ドローンをやりたい気分になったらYuki Aida名義でやってるという感じです。
ただ、この夏のmurmur recordsのイベントとか、今月のクラブイベントとか最近はダンサブルな音楽をやる機会も増えてきたので、段々名義と内容とがごちゃ混ぜになってきてはいますが。

ドローンに限った事じゃないですけど、一人で作業して完成までもっていけるので、やれる事も含めてかなり飽和状態にあると感じています。
ドローンは特に、単純に考えれば、一つの音をずっと持続させればいいわけですから、それほど音楽の知識が必要というわけでもないですし。
ただ、良いドローンはホントに時間感覚、それから空間認識を刷新します。
イメージとして私は川をよく思い浮かべますね。絶えず水が流れていて、総体としての川はいつもそこにあるんだけれど、一度過ぎ去った水とこれから私の前を過ぎようとしている水は確かに違うわけです。
しかし、過ぎ去った水も海に入り、蒸発して雨となり、いつかはまたこの川を流れるかもしれない、そんな大きな循環の縮図としてドローンを感じています。
一昔前に比べれば、都内では毎日どこかでイベントをやっていたり、美術との連携などもあって、だいぶ一般化したとは思いますけどね。
ただ、そんなに十人が十人良いと言うような音楽でもないと思いますので、音楽の一形態としては、これくらいがちょうど良いのかもと思ってみたりもします。
この枠の中で面白い事を考えなきゃいけないというような部分もあります。


最近注目しているアーティストはいらっしゃいますか?

それは切りがないくらいです。
最近大好きなのは、James Blake、Kyokaさん、それからThe Shanghai Restoration Projectや、Antony & The Johnsonsですね。
あとは、来年うちからリリースするアーティスト、HazelEye and The Padはヘビロテしてます。
これは楽しみにしていてほしいです!


今後の活動予定について教えてください。

レーベルとしては、11月16日に大好きなi8uの新作アルバムをリリースします。
もう、すっごく大好きなので、自分のレーベルからリリースできるなんて未だに信じられないくらいなんです。
仕上がったトラックを聴いたら、うちのレーベルカラーも考えて制作されたのがよく分かって嬉しかったですね。
今までの彼女の作品で一番スイートな音楽だと思います。
それから、来年とってもポップなアーティストのアルバムをリリースします。
今までのうちのラインナップを考えると、皆さんきっと驚かれると思います。
あと、時期はまだ未定ですが、mimosa|moizeのLucia H Chungと現在制作しているスプリットアルバムをCDRシリーズでリリースします。
これはテーマを最初に決めて、それぞれがトラックを持ち寄る形で制作しています。
Lucia discとYuki discの2枚組です。
ボーナストラックにはそれぞれ相手の素材を使って東京とロンドンでパフォーマンスしたライブレコーディングも収録する予定です。

今年はCDRも含めたら5作品もリリースできたし、夏にレーベル初のイベントも開催できたので、とても充実した年になりました。
来年はもう少しイベントに力を入れていきたいですね。
食事をしながら、家具の音楽のようにゆっくりドローンを楽しむイベントとか、色や香りを用いて統一感のあるイベントをシリーズ化するとか、色々考えてますので、どうぞお楽しみに!


2011年10月(横塚壮)