“HCDC” Christophe Charles


彼の仕事には宇宙の振動をそのまま体現したような壮大さがある。
そしてそれは、とても小さな音、例えばマイクロスコピックな態度とでも言うべきものとほとんど同じだ。
物体が存在する事自体に振動があり、音がある。
生前の武満徹が「世界には弛みない音の響きの潮流があり、私はそれを切り取って拝借しているに過ぎない」と言ったというが、
まさに彼の作品は様々な素材を用いて電子的にそれを表現していると思う。

本作"hcdc"は2008年に制作され、ジョン・ケージ研究の第一人者であるクリストフの父、ダニエルに捧げられている。
2010年にリリースされたダニエルの仕事を纏めたDVD"Nouvelle Revue d'Esthétique"の中でこの楽曲の10分間のバージョンを聴く事が出来るが、今回ついに全42分半というその全貌が明らかになった。
楽曲のマテリアルは彼の永らくの友人であるHenning Christiansenとのコラボレーション時の音素材、それから2008年に彼が行ったパフォーマンス、そして楽曲の後半にはダニエルの呼吸音もプロセスされている。

彼は、「なるべく大きな音で聴いてほしい。そうすれば音はリスナーの周囲を内へ外へ運動し始めるだろう」とこの作品についてコメントしている。
左右のパンニングはもちろん、中盤の太鼓のような音は遠くから徐々に眼前に近づき、その上に違う周期の低音が覆い被さって展開されていくところなんかは、2チャンネルの音の奥行きの表現の限界に挑んでいるようにも聴こえる。

これはクリストフ・シャルルという類希なサウンドアーティストが初めて父親に捧げた記念碑的なオマージュ作品であるし、なによりここにあるのは圧倒的な音響体験だ。

Christophe Charles(クリストフ・シャルル):
1964年フランス生まれ。1996年、筑波大学大学院芸術学研究科博士課程修了。1997年、フランス国立東 洋文化東洋言語研究所大学院博士課程修了。2000年より武蔵野美術大学映像学科准教授。2011年より教授。環境芸術学会理事。メディアアートを専門に、現代芸術における理論的・歴史 的な研究を行いながら、内外空間を問わずインスタレーション及びコンサー トを行い、それぞれの要素のバランス、独立性及び相互浸透を追求している。

主な作品として、CD作品:「undirected」 シリーズ(Mille Plateaux, Subrosa, CCI, ICC, Code, Cirque, Cross, X-tractレーベル などでリリース)やパブリックアート作品:大阪市住まい情報センターモニュメント(山口勝弘監修)音響担当、東京成田国際空港第一ターミナル中央アトリウ ム常設サウンドインスタレーション。また、山口勝弘、山本圭吾、風倉匠、Henning Christiansen、 逢坂卓郎、向井千恵、古館徹夫、 武井よしみち、oval、半野善弘、Numb、石川ふくろう、JOU、久保田晃弘、渋谷慶一郎等とのコラボレーションを多数行っている。

info.

catalog no. : MMR-18
format : CD
released : 2013/10/23

track listing.

01. HCDC (42:37)